【報告】第4回 大阪芸術文化交流シンポジウム「現場の視点から地域アーツカウンシルの〈仕組み〉を紐解く」レポート1:記録映像・レポート

記録映像

大阪アーツカウンシル主催「第4回大阪芸術文化交流シンポジウム 現場の視点から地域アーツカウンシルの〈仕組み〉を紐解く」(2022年2月26日、国立国際美術館 講堂)の記録映像を公開します。
※全体を一つの映像として公開していますが、各プログラムごとにスキップすることが出来ます。

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レポート

ご挨拶・雅楽の演奏

シンポジウムは、大阪アーツカウンシル統括責任者の中西美穂氏による開会の挨拶から始まりました。「はじめにコロナ禍における医療従事者の方々に感謝を申し上げます。そして今、戦争がある地域にいらっしゃる方々の無事を心から祈っています。どのような時にも芸術は人の力になると信じています」、続いて「本日は地域アーツカウンシルからの発表や議論の前に、音楽をお届けしたいと思います。『天王寺楽所』 雅亮会の奏でる音は1400年前より大阪の地で育まれ、その時々の宗教や政治、経済、そして人々と関係してきました。アーツカウンシルは芸術活動があるからこそ存在意義があると思います。はるか昔から人々は芸術に関わってきました、そのいにしえの大いなる芸術を思い起こし、シンポジウムに招き入れるために演奏して頂きたいと思います」という紹介がなされ、雅楽の演奏が行われました。

「ご挨拶・雅楽の演奏」の動画はコチラ

第一部「各地の地域アーツカウンシル事例紹介」

第一部「各地の地域アーツカウンシル事例紹介」では、山中俊広(大阪アーツカウンシル委員/インディペンデントキュレーター)の進行により、杉浦幹男(アーツカウンシル新潟 プログラムディレクター)、中西美穂(大阪アーツカウンシル統括責任者)、八巻真哉(京都府文化スポーツ部文化芸術課)、上田假奈代(堺アーツカウンシル プログラムディレクター/詩人)、高田佳奈(おかやま文化芸術アソシエイツ プログラムオフィサー)、山森達也(アーツカウンシルみやざき プログラムディレクター)が登壇し、各々の活動の紹介を行いました。
杉浦氏から、アーツカウンシル新潟の役割は元々地域にあったものを再発見し、多くの人達に関わってもらう。それらを通して幸福度の高い地域社会を作っていく事である、という考えが示されました。
大阪アーツカウシルの中西氏からは、活動を通してアーティストや文化団体等と連係し情報交換をしていく。それが大阪府市文化振興会議を通じて大阪の文化政策に繋がっているといった、アーツカウシルの仕組みが紹介されました。
京都府文化スポーツ部文化芸術課の八巻氏は今後の文化振興に必要な視点として「住んでいてよかったと誇りを持てるような、人々からここに住みたいと選ばれるようなまちづくり」を挙げられ、事業継続のために高度な専門性を持った人材(アートマネージャー)が必要との考えを示しました。
堺アーツカウンシルの上田氏からは、施策の推進計画を踏まえて状況をよくしていくために、地域文化会館の職員向け研修を行っている事や、調査研究・情報発信として、市民と勉強会を行っている等の事例が挙げられました。
おかやま文化芸術アソシエイツの高田氏からは、県内の調査研究の成果を配信している「ヒト・コト・場所」や、YouTube公式チャンネル「おかやまカルチャー・ヴィ」等の事業が紹介されました。
アーツカウンシルみやざきの山森氏からは、「国文祭・芸文祭みやざき2020」を開催した後に第6波の感染拡大が起こり、国文祭後の芸術に関する話し合いをする機会が減った事から、人々がただ話をするだけの場を作ろうと、宮崎県庁の中にこたつを置く「ひなたにこたつ」と題した取り組みを行ったという事例等が紹介され、第一部は閉じました。

「第1部:各地の地域アーツカウンシル事例紹介」の動画はコチラ

第二部「ディスカッション」

第二部は、権田康行(大阪アーツカウンシル委員/伊丹市立文化会館(東リいたみホール)館長)の進行で、第一部の登壇者に加え、コメンターとして古後奈緒子(大阪アーツカウンシル委員/大阪大学文学部准教授)、志村聖子(大阪アーツカウンシル委員/相愛大学音楽学部准教授)を迎えてディスカッションが行われました。はじめに登壇者達がそれぞれの地域の違いや共通点などについて意見を述べた後、古後氏から「地域の文化的なアイデンティティを見直し外交機能を担うようなハイアート的なものと、逆に市民活動から上がってきたようなもの、あと、どの地域団体も地域の課題に芸術を絡めて解決していこうとされている。その3つが興味深いです」というコメントが出されました。

志村氏より「これから全国で地域アーツカウンシルが増えていく中で、そこで働く『人』が動きやすく実力を発揮しやすい仕組みが作られていくことが重要」とのコメントに続いて、「今の仕組みの中で出来ない事、課題は何ですか」という質問が投げかけられ、杉浦氏は「色々なアーツカウンシルを立ち上げる相談に乗る中で思うのは、行政は出来ない理由を考えるという事。文化芸術が持っている自由さと、型にはめたい行政のベクトルがどうしても合いにくい、そういう課題が根っこにあると思います」、中西氏は「そもそも芸術文化に対する基礎研究が少ない、共通で使える資料がない」、山森氏は「アーツカウンシルは意外と孤立しやすい」、高田氏は「行政の担当者は2、3年で変わります、最初その方には何が出来るか分からない。だから担当者のポテンシャルを探っています。その方々と議論をすり合わせていくのが一番難しいと感じます」、上田氏からは「堺市は社会包摂を重視する方向ですが、その活動をサポートするのに2分の1補助なので、やればやるほど自己負担という赤字になる。また、社会包摂をしながら自立していくというのは 本当に難しい。そんな中で、医療や福祉など他分野の方々と共に活動し予算を配分する事は出来ないかとも思いますが、繋がりがあまりありません。むしろ行政の方のほうが他分野の方々について詳しいと思うので、力を発揮して頂けるのではないかと思っています」等々、それぞれの状況を反映した率直な回答がなされました。

また、八巻氏からは「私は公務員という立場なのですが、アーティストとの共通言語をどのように持つのかという事では、翻訳者であろうと心掛けています。そして、地方自治体や地域住民の方々などと話す時には、アーティストはスーパーマンではなく、あくまで地域の課題等を可視化してくれる存在であるという事を伝えるようしてます。また、文化政策室の担当者には、取組みのニーズや意識調査をして下さいという事を伝えています。それを提案のベースにした上で会話をしていこうとしています。」といった取り組み方が提示されました。続いて、社会に対する働きかけとしてメディアを使うという事に関する議題となり、杉浦氏から「それぞれの自治体が文化振興計画の改訂をする機会に、どれだけの人を巻き込めて、どれだけのアプローチが出来るかが社会にアピールする際の大きなポイントになるのかなと思います」という意見が述べられました。ディスカッションの最後に、古後氏から「私は(第一部でアーツカウンシルみやざきから発表された)「ひなたにこたつ」事業礼賛派です。場を開く発想としてすごいし、重要なのは祭り(国文祭・芸文祭)の後に出てきたという事ですね。多分その『祭りの後』というコンテクスト(文脈)を私達は今、共有してると思うんです」という考察等が示され、第二部は終了しました。

最後に、中西氏から「各地に頼りになる、魅力的で個性的なアーツカウンシルが活動を始めています。ぜひ皆さんが暮らす地域のアーツカウンシルのホームページを見たり、活動に参加してみて下さい」という締めの言葉が述べられ、シンポジウムは終了しました。

「第2部:ディスカッション」の動画はコチラ


第4回大阪芸術文化交流シンポジウム
「現場の視点から地域アーツカウンシルの〈仕組み〉を紐解く」
(2022年2月26日開催 主催:大阪アーツカウンシル)

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