【報告】大阪から「美術/アート」を拓く レポート2:登壇者 事後インタビュー
2020年1月25日、I-siteなんば(大阪府立大学)カンファレンスルームにて「第2回大阪芸術文化交流シンポジウム」を開催しました。
テーマは「大阪から「美術/アート」を拓く」としました。
内容は、第Ⅰ部「大阪府市補助金・助成金事業における「美術/アート」2018-19年度」、第Ⅱ部「美術コレクションから考える大阪」、第Ⅲ部「大阪から「美術/アート」を拓く」、第Ⅳ部「大阪の美術を拓く」の4部仕立ての約4時間、合計11名が登壇しました。詳しい報告書は2020年3月下旬にホームページにて公開します。
ここでは、登壇者の終了後インタビューを紹介します。
関連ページ:
・大阪から「美術/アート」を拓く レポート1:第Ⅳ部 ディスカッション
・大阪から「美術/アート」を拓く 開催概要
・大阪から「美術/アート」を拓く 第Ⅰ部 登壇者紹介・アンケート
・大阪から「美術/アート」を拓く 第Ⅱ部 登壇者紹介・アンケート
・大阪から「美術/アート」を拓く 第Ⅲ部 登壇者紹介・アンケート
登壇者 事後インタビュー
菅谷富夫(すがや・とみお)
[第Ⅱ部 登壇者]
大阪中之島美術館準備室 室長
以前から知っていた方たちもいるし今日初めて知り合う人たちもいて、最近は会う機会も少なかったので今日、現場で動いている人たちに会えたのはとってもよかったと思います。
中塚宏行(なかつか・ひろゆき)
[第Ⅱ部 登壇者]
大阪府府民文化部文化課・研究員
いろいろな立場のひとにお話しいただいたし、知っている方も結構おられましたし、こういう機会があってよかったかなと思っています。(大阪の美術・アートシーンを盛り上げていくということについては)みんな立場も違うので一概には言えないとは思いますが、共通しているのは「美術やアートにかかわりたい」あるいは「好きだから」という人ばかりだと思うので、それぞれの立場で頑張っていくことが一番重要なのではないかなと思います。
その頑張っていく中で、縁があった人達は協力し合えばいいし、無理やりくっつけるのではなくて、仕事の流れの中で縁があったら一緒に仕事をすればいいし、興味関心が共通する部分があれば、一緒に協力できることがあれば協力し合えばいいし、対立するところがあれば議論をして解決しればいいし、縁がなければしょうがないし、自然体でみんなそれぞれやっていけばいいんじゃないかなと思います。個人や2,3人でやっているところは、なかなか見渡せないとか、状況が把握できなかったり、悩む部分があるだろうから、そういう人は気の合う人と何人かグループになってやっていくことが必要かなと思います。そうやって頑張っている人たちが大阪のアートシーンを支えているような気もします。
3月に退職予定ですが、豊中市や東大阪市と協力する仕事はその後も続くと思うので、大阪府の身分からは離れるというだけで、なんらかのかたちで美術に関連するようなことは、お金になるならないは別にして、続けることになると思います。すそ野を広げるためのアートツアーというアイデアが出ていましたが、どなたかが企画されるなら協力できると思います。
小吹隆文(こぶき・たかふみ)
[第Ⅱ部 登壇者/司会]
フリーライター
自分自身は(第Ⅱ部の)司会という立場だったので、自分の意見をどんどん言うというよりは、登壇者の方々にできるだけたくさん話して頂こうという前提で考えていました。
個人的な思いとしては、「今の状況が良いとか悪いとか、展開が速いか、遅いか」等は別にして、自分が30年間見聞きしてきた中で、アーティストの選択肢が着実に広がっていて、自分がどういう生き方をするのか選べる、それはアーティストとしてご飯が食べられるかどうかとはまた別の問題で、そういう意味では今の方が状況はいいのではないかと思います。今日出演された方というのは(第Ⅱ部のお二人は別にして)、施設に関わったりとか、仕組みをつくったりすることに注力している方なので、行政などに対していろいろ注文があったりすると思いますし、それはそれぞれ頑張っていただくとして、自分自身はその立場ではないし、個人的にはそういう状況が出来上がっていくことで、むしろアーティストの側が、予めそういう支援ありきみたいな感じで、支援を前提にした活動しか考えなくなったら、面白くない、と。そんなことは関係なく、「本当に自分がやりたいからやっているんだ」という個人のエゴが突出するというか、思いだけで突っ走るような、アートの流行とか全く関係なしに出てくるような野太い人というか、そういう人を見たいという気持ちがあります。いち観客として。
ライターとして新聞やウェブに記事を書いているのですが、それと並行して、自分の足跡をツイッターとフェイスブックでその日に観た展覧会などをアップしているので、まずはそれを見てもらって、こういうことをやっている人間がいるんだな、ということをわかってもらえたらいいと思います。
宮本典子(みやもと・のりこ)
[第Ⅲ部 登壇者]
一般社団法人日本現代美術振興協会 事務局長
アートマネジメント&コンサルティング office N 代表
みなさん知っているのですけども、それぞれがやっていることを最近の状況としてアップデートできていなかったので、まずそれが伺えてよかったなということがあります。
大阪市・府のアート行政の方向性について発言しましたが、個人的に大阪府の障がいのある方の作品を紹介する仕事もしています。2018年に議員立法で「障害者による文化芸術活動の推進に関する法律」という新しい法律が文化と福祉の側面から発表されました。 法律が整うと何か動き出そうとしている胎動を感じます。 そうした現代の状況を反映しながら、障害者による文化芸術振興だけでなく、現代の芸術文化に対するアート行政が刷新され、活性化していって欲しいという思いがあります。
今年も6月最終週の金・土・日に「ART OSAKA」をホテルグランビアで開催しますので、ぜひ来てください。アートってもともと高額なイメージがあると思うのですが1万円前後の作品からありますし、若手から中堅の作家が多く出ているフェアですので、どなたでもぜひ気軽にいらしてください。
後藤哲也(ごとう・てつや)
[第Ⅲ部 登壇者]
近畿大学文芸学部文化デザイン学科 准教授
たまにアート系のイベントでお話しするような機会をいただくのですけれども、本日のように、4部構成でいろいろなレイヤーのお話しが半日で行われるという機会はなかなかないので、いろいろなことを知りたい人にはとてもいいイベントだと思いました。あと登壇者の男女比がまったく同じであった点なども配慮が行き届いていると感じました。
2月の終わりから3月の終わりにかけて1カ月ほど、「あまらぶアートラボ」(尼崎)でデザインの展覧会があり、ヨーロッパのデザイナーと一緒に架空のビジュアルアイデンティティをつくるという試みを行いますのでぜひ来ていただきたいです。
また今日のテーマでいうと、来年の1月から京都のdddギャラリーでアジアのデザイナーとの展覧会をやります。さらに韓国の光州でけっこう大規模な建築デザイン展のグラフィックデザインのところでキュレーションをするので、力を入れています。
シーズン・ラオ
[第Ⅲ部 登壇者]
無所属、芸術家、UNKNOWN ASIA審査員など
私は大阪のアートシーンについて知る機会が少なかったのですが、最近、大阪の新しいアートホテルの開会式に参加して、関西発日本抽象主義の「具体美術」の作品常設があるのを見ました。また今回のシンポジウムをきっかけに中之島美術館と大阪府にあるコレクションを知る機会になり、これから万博も控えた大阪の文化についてより興味が深まりました。
活動はこれまでと同じく展覧会やアートフェアに出展させていただきます。現在関西では、京都の35年歴史のある企画ギャラリーでインスタレーション作品とソル・ルウィット(Sol LeWitt) の作品を一緒にコラボしています。私の東洋的な自然現象の「間(余白)」を表現していているものと、アメリカのミニマル・アートの代表的な作家とを連想・対比させるという視点です。
他にはフランス・ニースの東洋美術館での企画展、北欧で作品の取材をします。
また「Unknown Asia」などいくつかのイベントの審査員をさせていただく予定です。
木坂 葵(きさか・あおい)
[第Ⅲ部 登壇者]
千島土地株式会社 地域創生・社会貢献事業部 所属 一般財団法人おおさか創造千島財団 事務局長
当財団だけで行うには限界がありますし、まちづくりと言っても、所有地で実践できることだけではなく、住之江区や大阪府市と共に出来ることはもっとたくさんあると常々思っています。
財団は北加賀屋をベースにしつつ大阪府、関西圏の芸術文化支援を行っていますので、今後連携できる地域が広がっていけばよいと考えています。
2020年オープン予定の「スーパースタジオ」は建物の大きさは関西最大級だと思います。スタジオだけではなくて、ギャラリーのような如何様にも使えるスペース(ラボラトリー)があり、キッチンがあったり、スタジオも賃料をとって貸すだけではなくて、制作に対するサポートも行っていく予定です。北加賀屋に多くのアーティストが集って、作り続けていくころができたらいいなと、考えています。多くの人に使って欲しいと思いますので、ぜひいらしてください。
山中俊広(やまなか・としひろ)
[第Ⅰ部 登壇者]
インディペンデントキュレーター
大阪アーツカウンシル委員
第Ⅲ部に登壇されている方と同じように、私も普段はいろいろなアートの活動を広げるということを行っていることもあり、大阪には頼もしい仲間がたくさんいるという実感を改めて持つことができました。
府市の補助金・助成金については、今回の発表を経て、現在のアートの分野で新しい提案や手法にチャレンジする人たちにどんどん活用してもらうために、お力添えをしていければと思います。
また個人の活動では、3月から茨木市で「HUB-IBARAKI ART PROJECT」という企画が始まります。そこでも大阪の一面を表現するような取り組みをしていきますので、ぜひお越しいただき、大阪の美術・アートを考える機会にしていだければと思います。
野添貴恵(のぞえ・きえ)
[第Ⅰ部 登壇者]
大阪アーツカウンシルアーツマネージャー
あまり表に出演して発言するということがなかったので、とても貴重な機会で、勉強になりました。アートマネージャーは採択事業の視察に行って報告書を書くということが業務であるのですけれども、税金を投入されている事業なので、どのような意味や魅力があるかということを、もっと視野を広げて、言葉にしていきたいと思います。
助成金には公的意義が問われるのですが、もし「申請しようか、どうしようか」と迷っている方がいらっしゃれば、新しい取り組みやチャレンジされることに対しては応援したい気は強い持ちので、躊躇せずにぜひ申請して頂きたいですし、府市ともに事前の説明会もあるので気軽に相談していただければと思います。府市から開催情報が出ましたら、大阪アーツカウンシルのウェブサイトでもご案内しますので、ぜひチェックしてみてください。
江藤まちこ(えとう・まちこ)
[第Ⅰ部 登壇者]
アートスペース勤務、事務局スタッフ
大阪アーツカウンシルアーツマネージャー
私たちは第Ⅰ部を担当したのですけれど、その構成を考える過程がとても楽しくて、助成金の特色が浮かび上がってくるなどたくさんの発見があり、やってよかったなと思います。またグループワークをすることによって、人それぞれの進め方や考え方が違うという発見もあり、勉強になりました。
昨年から大阪の伝統芸能を視察に行くことが多く、文楽や浄瑠璃などはもともと好きだったのですが、そのほかにも多様な「語り芸」があるということが驚きでした。彼らは少人数で活動している場合が多く、なかなか他の芸能との連携ができなかったり、スタンドアローンの状態ということもあるので、そういう現場を見て、現状を知って、出来ることを個人的にも見つけていけたらと思っています。
中西美穂(なかにし・みほ)
[総合司会]
大阪アーツカウンシル統括責任者
第二回目のシンポジウムを終えることができて、ほっとしています。どの登壇者のお話しも興味深く魅力的で、また聴講者からももっと府民や市民、アーティストが大阪の美術に関心を持って動いて行こうという意見があり、シンポジウムとは、登壇者が意欲的に発言し、聴講者も触発されるという動的なものであったことを改めて認識させられました。
第Ⅲ部の発言を重ねる中でキーワードとして「交流」や「滞在」という言葉が浮かびあがったことも印象に残っています。
第2回大阪芸術文化交流シンポジウム 大阪から「美術/アート」を拓く
(2020年1月25日開催・主催:大阪アーツカウンシル)