【報告】第3回 大阪芸術文化交流シンポジウム「人と地域を育み・つなげる場:公立文化施設の現場から」レポート2:登壇者インタビュー

2021年2月8日、吹田文化会館(メイシアター)小ホールにて「第3回大阪芸術文化交流シンポジウム」を開催しました。登壇者による貴重な報告や、演劇上演等、充実したプログラムとなり、53名が聴講しました。
開催の様子については、レポート1:記録映像をご覧いただければと思います。

ここでは、登壇者の終了後インタビューを紹介します。

関連ページ:
「人と地域を育み・つなげる場:公立文化施設の現場から」レポート1:記録映像
「人と地域を育み・つなげる場:公立文化施設の現場から」開催詳細
「人と地域を育み・つなげる場:公立文化施設の現場から」登壇者紹介

登壇者インタビュー

片山泰輔(かたやま・たいすけ)

[第1部 講師]
静岡文化芸術大学文化政策学部教授

今回のシンポジウムのように、府内の各施設で活躍する皆様が定期的に交流して、お互いの経験を共有することがとても重要だと思います。お互いの悩みや課題解決策の情報交換して、各団体の改革に活かすことももちろんですが、様々な成功事例を共有することで、芸術文化で何が実現できるのか、何を変えられるのか、という具体例を行政担当者や議会等にリアリティを持って提示できるようになります。法的根拠をはじめとする理論武装に加えて、具体的な事例を示せるようになることで説得力が増します。文化施設の予算や人員を拡充するためには設置者である自治体職員や議会の理解が必要ですが、自治体の担当者は数年で異動しますので、人が変わっても継続されるように条例や計画で、きちんと担保しておかないといけません。
また、今後は、文化部局の予算だけでなく、福祉、観光、産業振興、まちづくり等、他の政策分野の予算や資源を使って文化施設が活動することも重要です。高齢者に関する事業を文化部局の予算で確保しようとすると、行政の縦割りの予算配分に大きな軋轢が生じますが、もともと福祉部局に計上されている高齢者福祉の予算を使って文化施設が事業を行えるようになれば部局間の余計な政治的争いを回避しつつ、実効性のある取組を展開できます。こうした部局横断的な取り組みに対する理解を促し、それを正当化するためにもしっかりした計画策定が重要です。


權田康行(ごんだ・やすゆき)

[第2部 モデレーター]
大阪アーツカウンシル委員
伊丹市立文化会館(東リいたみホール)館長

今回のシンポジウムは、コロナ禍で気が塞ぎそうになってしまうことが多いなか、府内の公立文化施設で活躍される方と出会えたことが励みとなり、各施設の事例紹介からポジティブにこの状況に対応していきたいと改めて考えることができました。
特に第三部の演劇が特徴的で印象的であったように思います。このコロナ禍で公立文化施設に携わる方が経験したことを追体験するような感覚があり、共通する悩みや戸惑いを感じることができ、このシンポジウムが「わがこと」として感じられました。
このシンポジウムは、一歩目に過ぎず、この機会をどの様に今後に活かしていくかが課題であるように感じます。大阪の文化を考える上で、各地の公立文化施設がより有機的に活躍してくれるとことを願います。


高坂玲子(こうさか・れいこ)

[第2部 登壇者]
大阪府立江之子島文化芸術創造センター
(enoco)企画部門チーフディレクター

楽しく参加させていただきました。今回はお声がけいただき、ありがとうございました。改めて、大阪には多くの文化施設があり、そこで働く人たちがいること、それぞれの場所でこの1年の間に様々な奮闘があったことを知り、とても心強く感じました。この奮闘は現在進行形で、今すぐに何か結論を出せる状況にはありませんが、「こういうことがあった」「こういうことを考えた」ということを、今、自分たちの言葉で発したことが、これからにつながるのだろうと思っています。
シンポジウム各部の登壇者同士、小さな連帯が生まれたように感じているので、ここから大阪でのつながりをつくっていきたいと思います。どうぞ皆さま、これからもよろしくお願いします。


日笠良紀(ひかさ・よしき)

[第2部 登壇者]
公益財団法人八尾市文化振興事業団 舞台事業班 リーダー 音響担当

この度は大阪府内の様々な施設の方との交流の機会、それぞれの活動を発表する機会、知る機会をいただいたことを感謝いたします。施設間で交流する機会は年々少なくなっており、地域ごとに分断されたような感覚を覚えることが多くなりました。コロナ禍でその傾向がより進んでいるように感じる中で、今回のような交流活動が行われたことは、大変意義深いことであると思います。今後も活発な活動が継続して行われることを期待いたします。
最後に、コロナウイルス対応が大変な中での実施となり、関係者の皆様も実施まで状況が二転三転し、準備に運営にと大変なご苦労があったと思います。無事にシンポジウムを終えられたことを感謝いたします。


実島直美(みしま・なおみ)

[第2部 登壇者]
門真市民文化会館ルミエールホール 副館長(指定管理者:NPO法人トイボックス)

今回このような活動報告の場をいただきましてありがとうございました。緊張はしましたが、改めて整理して考え、広く多くの方に知っていただける機会を与えていただいたことに感謝しています。
また、他館の活動内容についても直接お話しをおうかがいすることができて本当に良かったと思います。今年度のような特殊の状況下においても、それぞれが工夫し今できることを生み出していたのが印象的でした。改めて文化芸術がもたらす心の豊かさについて再認識し、これを機会にますますの交流や情報交換など行いながら、文化の創造と発展に寄与していきたいと考えております。


植田宏美(うえだ・ひろみ)

[第3部 モデレーター]
大阪府立男女共同参画・青少年センター(ドーンセンター)統括責任者
NPO法人大阪現代舞台芸術協会(DIVE)理事

シンポジウム内で演劇作品を制作するという、これまでにあまり経験のないことに挑戦しました。「コロナ禍における公立文化施設の対応事例」というお題、果たしてお芝居として成立するのか、どのように受け取っていただけるのだろうかと、本番までどきどきしていましたが、力のある魅力的な俳優の皆さんのおかげで、想像以上にリアルに私たちが経験してきたこの1年の出来事が舞台上に現れたのではないかなと感じています。
芸術の最大の武器は共感力です。あの場に居合わせた皆さんが物語を共有することで課題を発見し、自分事としてその解決について思考する時間が持てたなら幸いです。わたし自身も「演劇の力」を再確認する時間となりました。ありがとうございました。


重田龍佑(しげた・りゅうすけ)

[第3部 モデレーター]
大阪市立芸術創造館 館長
ARTCOMPLEX ディレクター

シンポジウムの中でもお伝えしたのですが、感染症としてコロナ禍が一段落したとしても、芸術文化においての「コロナ禍」は、そこからが始まりであると考えております。私の知る限りでも、多くの方より「長期間に渡り活動機会を失ってしまえば、コロナが収束しても、もはや活動再開することができない」「家に閉じこもっているうちに、何かをやる意欲がすっかりなくなってしまった」「所属していた団体が解散してしまった」「本業がコロナ禍の影響を受け、経済的にも気持ち的にも余暇の活動をできる状況ではなくなってしまった」という声が寄せられています。明確な正解を誰も持たない中で、私たち公立文化施設に携わる者にできる事は、やはり「人が集う場を作る」のをやめないという事だろうと強く感じています。寄り添い、共に考えるという姿勢が、文化を守る事につながると信じて活動していこうと考えております。


鈴木友隆(すずき・ともたか)

[第3部 作・演出]
作家・演出家
NPO法人大阪現代舞台芸術協会(DIVE)前理事

コロナ禍で自分が職務上経験したことを、そのままセリフにして、俳優に演じてもらって、演出をつけて…「これは演劇なんだろうか」と、ずっとよくわからないままでした。もちろん「演劇」にはいろいろな形がありますが、何の物語性もないこの「演劇」は、果たして見た人が何を感じるものになるんだろう、と最後まで不安でした。たくさん感想をいただくような作品ではないですが、同じ公共文化施設の方に共感していただいたり、関係者が現場の実情に思いを巡らせる一助となったようで、「少しでも意味があったんだな」とほっとしております。
全ての人が大変な苦労をしている中で、自分のことを声高に主張するつもりはありません。世界中のたくさんの「コロナ禍」の一つとして、形を残す機会をいただいたことに感謝しています。


河上由佳(かわかみ・ゆか)

[第3部 演劇出演者]
満月動物園 所属

コロナ禍の情報は沢山あり、様々な状況を知っていたつもりでしたが、今回演じることで、当事者の方が感じていた慌しさや混乱に改めて気づけたように思います。少しでも皆様にお伝えするお手伝いができたなら幸いです。


得田晃子(とくだ・あきこ)

[第3部 演劇出演者]

当たり前のことが当たり前でなくなったこの一年を、演じながら追体験する貴重な体験でした。約一年ぶりにお客様の前でお芝居が出来て拍手を頂けた時は、ただひたすら嬉しかったです。ありがとうございました!


ネルマイサゴ

[第3部 演劇出演者]
PAM 所属

私は実際に普段はこういった公共施設で働いているのでその経験をそのまま舞台に載せた部分が多くありました。コロナ禍に現場で何が起きていたかを演劇の形で共有できたことは意義深いのではないかと思っています。


羽室ミユ(はむろ・みゆ)

[第3部 演劇出演者]
かまとと小町 所属

様々なことが「ニューノーマル」として変容していったこの一年間。私自身、一年以上舞台に立つ機会がなかった中で、改めて演劇の持つ力を実感しました。文化や娯楽としての演劇も、「伝える」手段としての演劇も、絶やしたくないと心から思います。


三田村啓示(みたむら・けいじ)

[第3部 演劇出演者]

この私とは違う他者を想像し、他者の経験を我が事として体験することは演劇の大きな機能の一つであり、その機能において適切に演劇を使うことは、特にこれからの時代、より公に開かれていくべきだと改めて感じた次第です。ご覧いただいた皆様、ありがとうございました。


山田一幸(やまだ・かずゆき)

[第3部 演劇出演者]
朱亜 shu-A 所属

上演を通して、実際に「居合わせる」ことの意味の大きさを改めて感じているところです。
表現する側と観る側が場を共有しならが作っていく「空気」を久しぶりに実感することができました。ありがとうございました。


風間美穂(かざま・みほ)

[第3.5部 登壇者]
泉州紀北ミュージアムネットワーク副代表
きしわだ自然資料館学芸員
堺市レッドリスト・外来種ブラックリスト改訂懇話会委員
(公財)日本野鳥の会大阪支部幹事
こどものためのジオ・カーニバル企画委員会企画委員

文化施設のなかまでありながら、芸術や文化ホールなどの現状についてあまり知らない、おそらく、ホールの方の方も博物館のことはそれほど知らない、というなかで、このようなお話させていただく機会をいただけたこと、ほんとうに感謝しています。私たちもほかのホールのお話を聞いて、なるほど、と思うことがたくさんありました。
ミュージアムのネットワークは、「小さいとこネット」や「西日本自然史博物館ネットワーク」など、今回ご紹介した泉州紀北ミュージアムネットのほか、いくつもあります。また、これについてもお話できれば幸いです。


岡本友厚(おかもと・ともあつ)

[第4部 モデレーター]
東大阪市文化創造館 副館長(指定管理者:PFI東大阪文化創造館株式会社)

今回、普段出会うことのない方々から様々な気付きを得ることができ、とても有難く思っています。多くの課題や事例の中に共通する視点や解決策があることを学びました。豊かな地域社会への第一歩を踏み出すために、我々は何ができるのでしょうか。文化芸術の多用な価値、その様々な示唆に富んだ内容で社会課題にアプローチすることができれば、あらゆる人々にとって文化芸術は必要なものであると支持されていくでしょう。我々を取り巻く状況はコロナ禍で急激に変化しています。孤独や孤立が様々な悪循環を生み出す中で、文化芸術がその特性を大いに発揮していくためにも、今後も地域と向き合い、公立文化施設が持つ価値を我々が訴え、受動的な単体施設から能動的なネットワーク連携施設へと転換することが重要なのではないか。何よりも、その思いがあるかどうか。その思いを共有して継続できるかどうか。公立文化施設は一筋の光を灯す存在になり得ると思います。


新熊 章(しんくま・あきら)

[第4部 登壇者]
堺市民芸術文化ホール(フェニーチェ堺)主査(事業担当)

シンポジウム参加させていただき、他施設の方とも様々な意見交換ができいい機会となりました。テーマが公立文化施設のネットワーキングということで、現在、各公立文化施設の指定管理者制度による運営母体の違いも切り離せない事柄だと感じました。フェニーチェ堺は公益財団法人堺市文化振興財団という堺市の外郭団体であり、非公募で選定された経緯があります。行政との連携を密にし、人材の中長期的な育成を見据えて、また他劇場とのネットワークを強めていくことに、非公募であることのメリットを見出しているわけですので、まさしく今回のテーマでいうところの機会をいただいたわけです。
フェニーチェ堺は現在、全国公立文化施設協会の下部組織である大阪府文化施設連絡協議会の南部ブロック代表で、そのブロックに属する施設との連絡を試みますが、なかなかどこの施設とも人員の余裕がなく、外にアンテナを張れない状況のように見受けられます。指定管理者制度は制度の趣旨からして、株式会社等民間による公立文化施設の運営も多数行われております。これらすべての施設が地域の住民に必要とされる施設であり続ける必要がありますので、ネットワークの力を借りながら、これからも互いに切磋琢磨していきたいと思います。


森 七恵(もり・ななえ)

[第4部 登壇者]
公益財団法人箕面市メイプル文化財団芸術創造セクションアソシエイトマネージャー 兼 箕面市立西南生涯学習センター館長

第4部では、ネットワーキング、地域コミュニティを焦点に公立文化施設の役割を考えてまいりましたが、箕面における自分自身の仕事をあらためて見つめるきっかけとなり、それをご登壇の皆さんやご来場の皆さんと共有するために言葉にして紹介することは、このシンポジウムがなければ取り組むことは無かったと思います。
また、シンポジウム全体をとおしても、同じ公立文化施設ではたらく皆さんのお話は、共感することもあり、これまで疑問に思っていなかった気づきがあったり、新たな視点に驚いたり、このシンポジウムによって考えさせられ、得られたものがありました。
今後も大阪アーツカウンシルを媒介として人と人とのつながりが広がっていけばと期待しております。


山田愉香(やまだ・ゆか)

[第4部 登壇者]
河内長野市立文化会館(ラブリーホール)事業グループ

この職種ならではの悩みを共有できる場として、今回のシンポジウムは大変貴重な場となりました。そして、シンポジウムをきっかけに関わりのなかった方々とのつながりができたことが何よりの成果と感じています。この仕事に限らず、共有・相談できるつながりがあることは物事を選択するうえで重要ですが、つながりを持つことは意外と簡単ではありません。大阪アーツカウンシルが、このシンポジウムでつながりを生み出す役割を担ってくださったことは、今後とても心強いです。
客席の方々との相互の意見交換ができればより良かったですし、また、異なる部で登壇された皆様や演劇に出演された役者の方々とももう少し交流できる時間があればより良かったですが、何より緊急事態宣言下で開催いただけたこと、そして参加させていただけたことに心より感謝いたします。 ありがとうございました!


中西美穂(なかにし・みほ)

[総合司会]
大阪アーツカウンシル統括責任者
大阪府市文化振興会議委員
(いずれも2018年より)

今回のシンポジウムは、大阪府内の公立文化施設のみなさまにご協力いただき開催できました。本当にありがとうございました。また、「演劇」や「立ち話」など、従来のシンポジウムにはないプログラムに挑戦したことも、大阪アーツカウンシルとして一歩踏み出せて良かったと思っています。
新型コロナウイルス感染症拡大が今後どのように文化芸術に影響を与え続けるのか現時点では不明ですが、このような困難な時にこそ、文化芸術は人々がつながり、気持ちを通わせあうために、互いの意見を尊重するために、欠かすことが出来ません。どうぞ、そのために様々な場面で引き続きご協力いただくとともに、芸術的刺激をいただきたいと思っています。


第3回大阪芸術文化交流シンポジウム
「人と地域を育み・つなげる場:公立文化施設の現場から」
(2021年2月8日開催 主催:大阪アーツカウンシル)

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